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炎症の分類
記者:永吉健志郎●急性炎症⇒急激に発症し、急速に経過する炎症一般に炎症と言えば急性炎症を指す数日~2週間以内のもの●慢性炎症⇒長期間続く程度な炎症組織への損傷が継続して加わることで急性炎症から移行することもある。繰り返す急性炎症の結果起こることもある。数週間から数か月継続する。時には治まることなく続くこともある。●滲出性炎症⇒急性炎症に伴う血管の生理反応によって血漿成分や炎症細胞が血管外へ流出する炎症。●慢性増殖性炎症⇒慢性炎症時に認められ、マクロファージや線維芽細胞血管内皮細胞の増殖によって生じる肉芽組織と上皮細胞の増殖を特徴とした炎症。※上皮細胞身体表面の「表皮細胞」管腔臓器の粘膜を構成する「上皮細胞」外分泌を構成する「腺房細胞」内分泌を構成する「腺細胞」●肉下種炎症類上皮細胞、多核巨細胞を含む肉芽腫の形成を特徴とした炎症。※類上皮細胞マクロファージが変化した細胞上皮細胞に類似する※多核巨細胞細胞内に複数の核があり細胞質が豊富正常の細胞の2倍以上の大きさを有する。※肉下種炎症反応による病変の一種。肉芽組織に類上皮細胞、多核巨細胞などの炎症細胞が集合してリンパ球や形成細胞、繊維細胞がこれを取り囲むことによって生じる。●アレルギー性炎症●非アレルギー性炎症⇒アレルギーの有無という観点から分類される炎症細胞について
炎症細胞には2種類の細胞がある。①白血球系細胞②組織間葉系細胞なかでも白血球細胞が中心的な役割を担っている。白血球細胞には・好中球・好酸球・好塩基球・肥満細胞・リンパ球・単球・マクロファージそれぞれの役割が決まっている。
炎症に関わる化学伝達物質の反応経路
◆ホスフォリパーゼ
⇒生体内に広く分布する酵素で、リン酸脂質を加水分解する。アラキドン酸系カスケードでは体内のCa²⁺の上昇をトリガーと、細胞膜のリン脂質からアラキドン酸を産生する役割上がる。
◆シクロオキシゲナーゼ
⇒プロスタグランジンの生成に関わる酵素であり、COXー1とCOXー2の2種類が存在する。炎症時に産生されるのはCOXー2であり、COXー1は胃腸や腎臓などに恒常的に存在し、粘膜の保護に関与する。
◆アラキドン酸
⇒プロスタグランジンの原料となる。炎症などによりリン脂質から放出され、COX(シクロオキシナーゼ)が働くことでプロスタグランジン(PG)が作られる。
◆プロスタグランジン
⇒アラキドン酸から作られる生理活性物質。
発赤・腫脹(血管拡張及び透過性亢進)、感覚神経(痛覚神経)の感受性上昇、視床下部の体温中枢に作用して発熱などを引き起こす。
◆セロトニン
⇒血小板が活性化されると内部からセロトニン(5-HT )が分泌される。平滑筋を収縮させ、血流をコントロールさせる作用がある。 また、炎症反応において感覚神経の受容体を刺激し痛覚神経を興奮させることで痛みを助長する働きを担う。
※下行性疼痛抑制系では痛みの抑制に働く
◆ブラジキニン
⇒キニン系カスケードによって産生される炎症物質。
プレカリクレインは血漿中の不活性な酵素前駆体(プロ酵素)で高分子キニノーゲンと結合しているが、活性化因子によってカリクレインに変化し、高分子キニノーゲンからブラジキニンを切り出すことで炎症メディエーターとして働く。
血管拡張・透過性亢進、痛覚神経の刺激、PGE₂との相互作用による痛みの増幅などで働く。
炎症のメカニズム
①毛間内径の変化と血流量の変化 組織が損傷すると血管が破れ出血
└血管周囲の細動脈が一過性に収縮
└血小板を中心とした凝血塊を形成し止血
※セロトニンが関与 ヒスタミンやブラジキニンの作用で細動脈拡張
└損傷部位での血流増加し発赤や発熱
└血管拡張により細動脈などの血圧増加
└血漿成分を含まない水分が血管から漏出
※ブラジキニンは痛みの発生に関わる
②血管透過纓更新と血漿成分の漏出 炎症が生じる
└肥満細胞からヒスタミンや炎症性サイトカインが分泌
└血管内皮細胞を収縮させる
└血管の透過性亢進
└血漿成分が漏出し腫脹が発生 ③白血球の血管外への流出 血漿成分が漏出
└血管内の体液成分が減少し粘性増加
└血流が遅くなる
└細胞成分が血管内壁に集まる
└タンパク質分解酵素を出す
└血管内皮細胞の血管壁を破壊
└血管外に漏出
※『細胞浸潤』という
④白血球による貪食 白血球は炎症が起きている損傷部に向かい遊走
└中でも好中球は最初に損傷部位に遊走
└細菌や壊死した細胞の貪食を行う
└処理を終えた好中球はアポトーシスに陥る
└マクロファージによって貪食される
マクロファージは壊死した細胞の残骸も貪食
└除去しきれない場合はオートファジーによって除去
└同時期に線維芽細胞も集まる
└強力なたんぱく質分解酵素を分泌
└損傷・変性した細胞外基質を分解
⑤炎症の終息
⑤ー1 完全治癒
⑤ー2 瘢痕治癒
⑤ー3 膿瘍形成